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第7話 おひさまとおつきさまのおくりもの

last update publish date: 2026-07-13 17:09:45

 森の奥深く、こんもりとした木々に囲まれた小さな家がありました。そこには、やさしい目をした小さなうさぎの女の子「ももこ」が住んでいました。ももこは、ピンク色のリボンをつけていつも元気いっぱい。

「おはよう、おひさま!」

ももこは朝目覚めると、窓から差し込む朝日に向かって手を振りました。

「今日も一日よろしくね!」

ももこの小さなベッドのわきには、お花の絵が描かれた小さな時計がカチカチと優しい音を立てていました。

ある朝、ももこが庭の花に水をやっていると、キラキラと光る小さな紙切れが空から舞い降りてきました。

「あれ?なにかな?」

ももこは不思議そうに紙を拾い上げました。

それは金色と銀色のきらきらした文字で書かれた手紙でした。

「親愛なるももこへ。わたしたち、おひさまとおつきさまは、とても大切なおくりものをなくしてしまいました。それをさがす旅に出てくれるやさしい子を探しています。ももこ、お手伝いしてくれませんか?」

ももこは目を丸くして手紙を何度も読み返しました。

「わあ!おひさまとおつきさまからの手紙だ!」

ももこは急いでリュックサックに必要なものを詰め始めました。

「えーと、ハンカチに、おにぎり、水筒、それから...」

その時、窓からふわっと風が吹き込み、ももこの大好きな青いマフラーが踊るように浮かびました。

「そうだ!マフラーも持っていこう。夜はさむいかもしれないもんね」

ももこが言うと、マフラーはふわりと彼女の首に巻き付いて、優しく頬をなでました。

「あれ?マフラーさん、あなたも一緒に来てくれるの?」

マフラーはまるで返事をするように、もう一度ももこの頬をなでました。

準備を終えたももこは、大きな森の入り口に立ちました。高い木々が頭上で揺れ、葉っぱがサラサラと音を立てています。

「さあ、おひさまとおつきさまの贈り物を探す旅の始まりだよ」

ももこは自分に言い聞かせるように小さくつぶやきました。

ちょうどその時、一羽の小さな青い鳥がももこの前に舞い降りてきました。

「こんにちは、ももこ!わたしはあおい。おひさまとおつきさまに頼まれて、あなたを案内することになったんだよ」

「わあ、あおいさん!よろしくお願いします」ももこは嬉しそうに笑いました。

ももことあおいは森の中を進んでいきました。やがて、色とりどりの花が咲き誇る美しい花畑に出ました。

「わあ、きれい!」

ももこは花の香りを深く吸い込みました。

すると不思議なことに、花々が歌い始めたのです。

「ようこそ、ももこちゃん。ようこそ、あおいくん」

花たちは優しい声で歌いました。

「おひさまのおくりものは、わたしたちのところにはないけれど、ヒントをあげるね。それは、とても暖かくて、見えないけれど、みんなを幸せにするもの」

「見えないけれど、暖かくて、幸せになるもの?」

ももこは首をかしげました。

「ありがとう、お花さんたち」

あおいが言いました。

「そのヒント、大切にするね」

花畑を過ぎると、ももことあおいは小川にたどり着きました。でも、いつもなら楽しそうに流れているはずの小川が、今日はとても静かでした。

「どうしたの?」

ももこが小川に近づいて尋ねました。

小川はしゅんとした声で答えました。

「ぼくの歌が聞こえなくなってしまったんだ。だから、お魚たちも遊びに来なくなってしまったよ...」

ももこは考えました。そして、自分の持っていた小さな鈴を取り出して、小川の縁に置きました。

「この鈴の音を聞いてごらん。きっと新しい歌が思いつくよ」

鈴が風に揺られて、キラキラとした音色を奏でると、小川は少しずつ元気を取り戻し始めました。

「ありがとう、ももこちゃん!」

小川は嬉しそうに水音を立てました。

「おつきさまのおくりものについて教えてあげるね。それは、柔らかくて、見えないけれど、みんなに安心を与えるもの」

日が暮れ始め、空が赤く染まる頃、ももことあおいは森の小さな空き地で休むことにしました。

夜空には星がまたたき始めていましたが、一つだけ、とても悲しそうに光る小さな星がありました。

「あれ?あの星、どうしたのかな?」

ももこが空を見上げて言いました。

すると、その星は少しずつ下がってきて、ついにももこの前に降り立ちました。それは、小さな光の玉でした。

「ぼくは道に迷ってしまったんだ」

星は震える声で言いました。

「おうちに帰れなくなっちゃった...」

「だいじょうぶだよ」

ももこは優しく星を手のひらに乗せました。「みんなでいっしょに、あなたのおうちを探そう」

「でもどうやって星をおうちに帰すの?」

あおいが心配そうに尋ねました。

その時、ももこの首に巻いていた青いマフラーが風もないのにふわりと舞い上がり、星の周りを包み込みました。

「マフラーさん、何をしているの?」

マフラーは星を包み込んだまま、ゆっくりと上へ、上へと昇っていきました。やがて夜空の高いところで、マフラーはくるりと回転し、星を空へと解き放ちました。

小さな星は一瞬まぶしく輝き、そして他の星々の中へと帰っていきました。

「ありがとう、ももこちゃん!」

星の声が空から聞こえてきました。

「おひさまとおつきさまのおくりものは、君のすぐそばにあるよ」

次の日、ももこが旅を続けていると、突然空が暗くなり、大粒の雨が降り始めました。

「あ、雨だ!」

ももこは急いで大きな木の下に駆け込みました。

でも雨はどんどん激しくなり、木の葉っぱでは雨をしのぎきれなくなってきました。

その時、ももこの青いマフラーが再び動き出し、大きく広がってテントのようになりました。

「わあ、すごい!マフラーさん、ありがとう!」

マフラーの下で雨宿りをしていると、小さな声が聞こえてきました。

「た、たすけて...」

声の方を見ると、一匹の小さなりすが雨に濡れてふるえていました。

「こっちにおいで」

ももこは優しく手を差し伸べました。

りすはためらいながらも、ももこの手の上に飛び乗り、マフラーの下に入りました。

「あ、あったかい...」

りすは安心したように目を閉じました。

「お名前は?」

ももこが尋ねると、

「ぼく、くるみ」

りすは小さな声で答えました。

「おくりものを探しているの?」

ももこはびっくりして、

「どうして知ってるの?」

と聞きました。

くるみは微笑んで言いました。

「森中の動物たちが噂してるよ。勇敢なうさぎのももこが、おひさまとおつきさまのおくりものを探してるって」

雨が上がると、くるみはお礼にと自分の家に招待してくれました。

くるみの家は大きな木の穴の中にありました。中はとても居心地がよく、ドングリやクルミがたくさん並べられていました。

「どうぞ、食べて」

くるみはクルミを差し出しました。

「ありがとう」

ももこはクルミを一つ手に取りました。

食事の後、くるみは言いました。

「おひさまのおくりものについて、もっと教えてあげるよ。それは、誰かを想う時に胸の中でぽかぽかするもの」

「誰かを想う時に...」

ももこは考え込みました。

次の日、くるみも一緒に旅を続けることになりました。三人は森の奥へと進み、やがて霧に包まれた美しい湖に出ました。

「ここは霧の湖」

アオイが説明しました。

「この先に行くには、湖を渡らなければならないんだ」

湖の岸には、小さなボートが一艘つながれていました。

「このボートで渡ろう」

ももこは言いました。

しかし、ボートに乗り込もうとした時、霧の中から優しい声が響きました。

「待ちなさい、旅人たち。ここを通りたいのなら、まず質問に答えてください」

霧の中から現れたのは、銀色に輝く美しい精でした。

「わたしは霧の精。ここを通る者に質問をします」

精は静かな声で言いました。

「何でも答えるよ」

ももこは勇敢に言いました。

霧の精はほほえんで尋ねました。

「あなたにとって、一番大切なものは何ですか?」

ももこは少し考えてから答えました。

「わたしにとって一番大切なものは...友だちです。あおいさんやくるみさん、そしてマフラーさんみたいに、いつも一緒にいてくれる人たち」

霧の精は満足そうにうなずきました。

「良い答えです。湖を渡ることを許しましょう」

ボートは静かに霧の湖を進んでいきました。周りは白い霧で何も見えません。

「少し怖いね」

くるみがももこにくっついて言いました。

「だいじょうぶだよ」

ももこは優しく答えました。

「みんないっしょだもん」

そのとき、ボートが急に揺れ始めました。

「あ!なにかがボートにぶつかってる!」

あおいが叫びました。

水面から顔を出したのは、大きな魚でした。

「おまえたち、ここで何をしている?」

魚は厳しい声で尋ねました。

「わ、わたしたちはおひさまとおつきさまのおくりものを探しているんです」

ももこは恐る恐る答えました。

魚は少し驚いた様子で、ももこたちをじっと見つめました。

「なるほど、そういうことか」

魚は少し優しい声になりました。

「わたしはことばの魚。いつも湖の底でみんなの言葉を聞いているんだ」

「みんなの言葉?」

ももこは不思議そうに尋ねました。

「そう、うれしい言葉、悲しい言葉、怒った言葉...すべての言葉は最後にここに流れてくるんだ」

言葉の魚は続けました。

「おつきさまのおくりものについて、もう一つヒントをあげよう。それは、夜空のように静かで、でも心の中を明るく照らすもの」

霧の中をしばらく進むと、ようやく向こう岸が見えてきました。

「やった!もうすぐだ!」

くるみは喜びました。

岸に着くと、そこには虹色に輝く美しい花が一輪、咲いていました。

「わあ、きれい!」

ももこは思わず声を上げました。

「これは虹の花」

あおいが説明しました。

「とても珍しくて、見た人の願いを一つだけ叶えてくれるんだって」

「本当?」

ももこは驚きました。

「どんな願いごとをする?」

くるみが尋ねました。

ももこは真剣な顔で花を見つめました。

「おひさまとおつきさまのおくりものが見つかりますように...」

その瞬間、虹の花はキラキラと輝き、ももこの前に一枚の絵が浮かび上がりました。それは、笑顔の家族の絵でした。

「これは...」

ももこはその絵をじっと見つめました。

絵はすぐに消えてしまいましたが、ももこの心に温かいものが広がりました。

岸を離れると、一行の前に高い山が現れました。

「あの山の頂上に行けば、きっと贈り物が見つかるよ」

あおいが言いました。

山道は険しく、時には急な坂や大きな岩もありました。でも、ももこたちは助け合いながら、少しずつ頂上を目指しました。

「もう少し!」

ももこは友だちを励ましながら、前に進みました。

山を登るうちに、空はだんだん暗くなっていきました。

ようやく頂上に着いたとき、空はすっかり夜になっていました。そこには、石でできた小さな祭壇がありました。

「ここが最後の場所だね」

あおいは小さな声で言いました。

祭壇には、

「おひさまとおつきさまのおくりものは、すでにここにある」

と刻まれていました。

「すでにここにある?」

ももこは首をかしげました。

「でも何も見えないよ?」

その時、月明かりが祭壇を照らし、鏡のような表面が現れました。

ももこが鏡をのぞき込むと、そこに映ったのは自分自身の姿でした。でも、よく見ると、自分の胸のあたりが金色と銀色に光っています。

「これは...」

すると、鏡の中のももこが口を開きました。「見つけたね、おくりもの」

「え?どこに?」

本物のももこが尋ねました。

「ずっとあなたの中にあったんだよ」

鏡の中のももこが笑顔で答えました。

「おひさまのおくりものは『あたたかい心』、おつきさまのおくりものは『やさしさ』。あなたは旅の間中、それを使っていたんだよ」

ももこは驚いて、今までの旅を思い返しました。花畑、小川、迷子の星、雨の中のす...すべての出来事で、彼女は自分の心の温かさと優しさを使っていたのです。

「そうか...おくりものはずっとわたしの中にあったんだ」

ももこはようやく理解しました。

その瞬間、祭壇から金色と銀色の光が溢れ出し、空高く昇っていきました。

「見て!」

くるみが指さしました。

空では、おひさまとおつきさまが同時に姿を現し、ももこたちに微笑みかけていました。

「おめでとう、ももこ」

空からおひさまの声が響きました。

「あなたはおくりものの本当の意味を理解したね」

「これからも、その大切なおくりものを使って、みんなを幸せにしてね」

おつきさまの優しい声が続きました。

ももこは嬉しそうに空に向かって手を振りました。

「ありがとう、おひさま!ありがとう、おつきさま!」

帰り道は不思議と明るく、楽しいものでした。ももこはあおい、くるみ、そして青いマフラーと一緒に、歌を歌いながら森を抜けていきました。

「ほら、もうすぐおうちだよ」

あおいが言いました。

ももこの小さな家が見えてきた時、ももこは決心しました。これからも、自分の中にある温かい心と優しさというおくりものを、大切に使っていこう。

「ただいま」

ももこはおうちに向かって微笑みました。そして、新しい一日の始まりを心待ちにしながら、家路につきました。

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